乾いた都会の砂埃・小さなテーブル 「あのね、もう来年からは、こんなふうに結婚記念日のお祝い、しなくていいよ」 大切な結婚記念日。素敵なレストラン、高価なプレゼント、大きな花束に赤いワイン。愛妻家の夫は、美味しい料理にも、妻といられる時間にも大満足。しかし、一緒に喜んでくれて... 2024.08.21乾いた都会の砂埃
乾いた都会の砂埃・心の鎖 彼氏が何を考えているのかわからない。自分が本当に愛されているかわからない。よく聞く悩みだけど、それは話し合いが足りないからだと思っていた。 でも話し合い以前の問題ってあるんだなと、私は二十五歳にしてようやく知ることになった。 夏の終わり... 2024.08.15乾いた都会の砂埃
乾いた都会の砂埃・スリムじゃなきゃ人権がない世界だけど、ぽっちゃり少女は王子様と幸せになりたい! シンデレラストーリーというものを書いてみようと思いました。 あらすじ スリムな人しかいない街、ムリス市に住む、身寄りのないぽっちゃり少女エリン(15)。 両親を亡くした後、神父に引き取られ街の教会で育つ。 子どもの頃から太っていていじめられ... 2024.08.15乾いた都会の砂埃
乾いた都会の砂埃・六月の朝に、君を偲ぶ ───六月のある日に。 今日は死んだ友達の誕生日だ。 二十歳を目前に死んだ彼女の。 たぶん毎年この話をしている。 死んだのは病気でも何でもなかった。 何の予兆もなかった。 彼女は恋人に薬を打たれて、それであっけなく死んだのだ。 不幸な生... 2024.08.15乾いた都会の砂埃
乾いた都会の砂埃・白い薔薇 花に埋もれてる君を見た。 美しく敷き詰められた無数の白い花。 こんな情景をいつかテレビの中で見た。 加藤刑事は顔をしかめて「悪趣味だな」と呟いた。 「おまえがやったのか」 「僕……僕は」 僕は君を刺した。 ナイフを抜くと、ドレスみたいな白い... 2024.08.15乾いた都会の砂埃
月明かり英② 凛恋さんが来て、私は少しはしゃぎすぎた。 それからしばらく、気分が盛り上がったり、不安定になって、友花に心配をかけた。 人並みに楽しむことすらできないのか、と落ち込む。 友花はさりげなく元気づけようとしてくれる。 いつも迷惑や心配ば... 2024.08.15月明かり
月明かり友花② 水が滴っている英の髪をもう一度拭き直すと、私はドライヤーのスイッチを入れた。 熱すぎないように、手を添えて乾かしていく。 「熱い?」 私が聞くと、 「大丈夫」 と英が答えた。 きっととても疲れているんだろうなと思いながら、心を鬼にして... 2024.08.15月明かり
月明かり英① 友花が仕事に行ってしまったあと、私は朝のぶんの薬を飲んだ。 一包化された薬は全部で7錠。まとめて口に放り込んだ。 子どもの頃は1つずつでもなかなか飲めなかったのにな、と思いながら、多めの水で流し込む。 それから、言われた通りにベッドに... 2024.08.15月明かり
月明かり友花① ため息なのか、うめき声なのか。 かすかな声で目が覚めた。 私は体を起こし、英の顔を覗き込んだ。 涙が枕を濡らしている。 また、いつものやつだ。 こうなってしまったら、私にはなすすべもない。 「友花……、起こしちゃった?」 寝起き... 2024.08.15月明かり
あの頃、バラの咲く街で第八章 私は社会復帰がしたかった。仕事をしたい。働くことは好きだし、世の中の役に立ちたい。生活保護も早く抜けたい。 だけど、先生はまだ働くのは無理だと言う。 それなら、自宅療養の時間を何か有意義に遣えないかと思った。例えば、就職に役立つような資... 2024.08.15あの頃、バラの咲く街で