ひとひらひらひら積もりゆく雪のように……

>>初めてお越しになった方へ

乾いた都会の砂埃

・小さなテーブル

「あのね、もう来年からは、こんなふうに結婚記念日のお祝い、しなくていいよ」 大切な結婚記念日。素敵なレストラン、高価なプレゼント、大きな花束に赤いワイン。愛妻家の夫は、美味しい料理にも、妻といられる時間にも大満足。しかし、一緒に喜んでくれて...
乾いた都会の砂埃

・心の鎖

彼氏が何を考えているのかわからない。自分が本当に愛されているかわからない。よく聞く悩みだけど、それは話し合いが足りないからだと思っていた。  でも話し合い以前の問題ってあるんだなと、私は二十五歳にしてようやく知ることになった。  夏の終わり...
乾いた都会の砂埃

・スリムじゃなきゃ人権がない世界だけど、ぽっちゃり少女は王子様と幸せになりたい!

シンデレラストーリーというものを書いてみようと思いました。 あらすじ スリムな人しかいない街、ムリス市に住む、身寄りのないぽっちゃり少女エリン(15)。 両親を亡くした後、神父に引き取られ街の教会で育つ。 子どもの頃から太っていていじめられ...
乾いた都会の砂埃

・六月の朝に、君を偲ぶ

───六月のある日に。   今日は死んだ友達の誕生日だ。 二十歳を目前に死んだ彼女の。 たぶん毎年この話をしている。 死んだのは病気でも何でもなかった。 何の予兆もなかった。 彼女は恋人に薬を打たれて、それであっけなく死んだのだ。 不幸な生...
乾いた都会の砂埃

・白い薔薇

花に埋もれてる君を見た。 美しく敷き詰められた無数の白い花。 こんな情景をいつかテレビの中で見た。 加藤刑事は顔をしかめて「悪趣味だな」と呟いた。 「おまえがやったのか」 「僕……僕は」 僕は君を刺した。 ナイフを抜くと、ドレスみたいな白い...
月明かり

英②

凛恋さんが来て、私は少しはしゃぎすぎた。  それからしばらく、気分が盛り上がったり、不安定になって、友花に心配をかけた。  人並みに楽しむことすらできないのか、と落ち込む。  友花はさりげなく元気づけようとしてくれる。  いつも迷惑や心配ば...
月明かり

友花②

水が滴っている英の髪をもう一度拭き直すと、私はドライヤーのスイッチを入れた。  熱すぎないように、手を添えて乾かしていく。 「熱い?」  私が聞くと、 「大丈夫」 と英が答えた。  きっととても疲れているんだろうなと思いながら、心を鬼にして...
月明かり

英①

友花が仕事に行ってしまったあと、私は朝のぶんの薬を飲んだ。  一包化された薬は全部で7錠。まとめて口に放り込んだ。  子どもの頃は1つずつでもなかなか飲めなかったのにな、と思いながら、多めの水で流し込む。  それから、言われた通りにベッドに...
月明かり

友花①

ため息なのか、うめき声なのか。  かすかな声で目が覚めた。  私は体を起こし、英の顔を覗き込んだ。  涙が枕を濡らしている。  また、いつものやつだ。  こうなってしまったら、私にはなすすべもない。 「友花……、起こしちゃった?」  寝起き...
あの頃、バラの咲く街で

第八章

私は社会復帰がしたかった。仕事をしたい。働くことは好きだし、世の中の役に立ちたい。生活保護も早く抜けたい。  だけど、先生はまだ働くのは無理だと言う。  それなら、自宅療養の時間を何か有意義に遣えないかと思った。例えば、就職に役立つような資...
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