2023-12

風の国

2. 長い春休み

私がまだ幼い頃に、両親と姉は死んだ。姉は私の三歳上で、私をとても可愛がってくれていたらしい。  三人の死因は急性一酸化炭素中毒。無理心中だった。何故私だけ置いて行かれたのかはわからない。  あまり裕福な家ではなく、古くて狭いアパートで家族四...
風の国

1. 十六歳の誕生日

――五月のよく晴れた朝。  窓を開けると、雨上がりの空気が清々しい。  昨夜は雨が降っていて、窓の外がうるさかった。  でも今日は眩しすぎるくらいの太陽。  今日は私の十六歳の誕生日だ。とはいえ、昨日という、何もなかった日の続きにしか過ぎな...
Moonlight

boule de neige

今日のお茶菓子は、妻が作ってくれることになった。  いつもはお菓子作りの好きな俺が気まぐれに作る。作らない日は買ったものやいただいたものを食べる。  でも今日は、妻が「私が作るよ」って言ったので、できあがるのを待っている。手伝おうかと思った...
お知らせ

結城奏小説サイト『désespoir』オープンします

『désespoir』は、『デゼスポワール』と読みます。フランス語です。 グローバルナビのドロップダウンを利用しているのでPCからの閲覧を推奨しますが、タブレットでもスマホでも不自由なく読むことができるようになっているはず。 まだ掲載してい...
星の見えない空 番外編

嘘つきパンケーキ

彼と出会ったのはクリスマスが終わったばかりの頃だった。  友達の彼氏の後輩で、誘われて四人でカラオケに行った時、たわいない話が盛り上がって仲良くなった。  彼の選ぶ言葉は優しくて、話しているとほっとした。共通の趣味は特に無いみたいだったけど...
Moonlight

ほんのり甘くて優しい君と

俺が家に帰ると、いつものように彼女が玄関まで出てきてくれた。 「ただいま~」 「おかえりなさい」  元気そうな声にほっとする。今日は顔色もいいみたい。 「晩ご飯はお鍋にしたよ」 「何鍋~?」 「辛いのは喉に悪いかと思って、白味噌の鱈たら鍋に...
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